持ち家の価値を見える化し、不動産会社との契約から引き渡しまで、迷いやすいポイントを順番に整理します。
私が売却した持ち家は、私鉄の駅から徒歩10分圏内にありました。最初にイエウールとウチノカチで相場を調べ、2社の訪問査定を受けたうえで、両社と一般媒介契約を結びました。立地を考えれば比較的早く売れるのではないかと思っていましたが、現実には内覧希望者もほとんど現れませんでした。
広告掲載から売買契約までにかかった期間は約10か月です。それでも売却を焦らず、不動産会社の査定価格を参考に最低希望価格を決め、仲介会社の動きを見ながらじっくり進めました。その結果、最終的には当初の査定価格より約30万円高く売却でき、納得できる取引になりました。
この経験から分かったのは、持ち家の売却では高い査定額だけを追うのではなく、価格の根拠、媒介契約の違い、担当者の姿勢、売却費用、引き渡し条件まで確認することが大切だということです。この記事では、実際に迷ったことや、やってよかったことも交えながら、査定から引き渡しまでを順番に紹介します。
- 持ち家の価値を調べる方法
- 一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違い
- 売却時にかかる主な費用
- 査定から引き渡しまでの期間
- 実体験から分かった、契約前に確認したいポイント
この記事は一般的な売却の流れをまとめたものです。税金、登記、契約上の判断は物件や家族の状況によって異なります。必要に応じて、不動産会社、税理士、司法書士などの専門家へご確認ください。
持ち家売却の全体像
周辺の取引価格を確認
複数社の根拠を比較
依頼する方法を選択
広告・内覧・条件交渉
決済・登記・鍵の受渡し
まずは持ち家の価値を可視化する
不動産には、株式のような一つの時価がありません。同じ地域、同じ築年数でも、土地の形、接道状況、日当たり、建物の状態、間取り、管理状況などによって価格は変わります。
① 自分で相場を調べる
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、近隣の取引価格、成約価格、地価公示などを確認します。
② 不動産会社の査定を受ける
最初は机上査定で広く比較し、具体的に進める会社には訪問査定を依頼します。
周辺価格を見るときの比較項目
- 所在地と最寄り駅
- 土地・建物の面積
- 築年数と建物の状態
- 戸建てかマンションか
- 駅からの距離
- 取引された時期
査定価格から「自分の最低希望価格」を考える
最低希望価格は、不動産会社から提示された査定価格とその根拠を参考にして、「これより下では売りたくない」と決めました。複数社の査定価格を比べ、自分なりの基準を持っておくと、売却を焦って相場から大きく下げることを避けやすくなります。
査定価格そのものだけでなく、どの成約事例を参考にしたのか、どのくらいの期間で売る想定なのか、値下げをどの段階で検討するのかまで確認して、最低希望価格を考えます。
積算価格も補助的な参考情報になります
周辺の成約事例や不動産会社の査定を中心にしながら、積算価格も補助的に確認できます。積算価格とは、土地と建物をそれぞれ評価し、合計して求める試算価格です。
土地の評価
路線価、公示地価、周辺の取引事例などを参考にします。路線価を使う簡易計算では、土地面積だけでなく、奥行、形状、角地などによる補正も考えます。
建物の評価
同じ建物を現在建てる場合の再調達原価を基に、築年数、構造、設備、劣化状態、使いやすさなどによる減価を反映します。
不動産会社の査定価格を比較するだけでなく、「全国地価マップ」で自宅周辺の路線価や地価公示価格を調べ、土地と建物を分けて自分でも積算してみました。
全国地価マップでは、固定資産税路線価、相続税路線価、地価公示価格、都道府県地価調査価格を確認できます。自分で計算した金額をそのまま売却価格にするのではなく、不動産会社から提示された査定価格が大きく外れていないか、説明を理解するための補助材料として使いました。
路線価は、もともと相続税・贈与税の土地評価に使われる基準で、国税庁は地価公示価格等の80%程度を目途に定めています。そのため、路線価と築年数だけで実際の成約価格が決まるわけではありません。土地の個別条件、建物の状態、需要、市況なども含め、査定額や成約事例と一緒に判断します。
最も高い査定額を出した会社が、最も高く売ってくれるとは限りません。査定額の根拠となった成約事例、想定する販売期間、売り出し価格と値下げ方針まで聞いて比較しましょう。
査定時に確認したい6項目
- 査定額の根拠となった成約事例
- 想定している売却期間
- 最初の売り出し価格
- 値下げを検討する時期と幅
- 広告の方法と内覧対応
- 同じ地域・物件種別での売却実績
最初に「イエウール」と「ウチノカチ」を使ってオンラインで査定・相場確認をしました。大体の価格帯を知るには便利で、売却価格の目星をつけることができます。
ただし、実際に売却を進めるなら、やはり不動産会社の担当者に家まで来てもらい、現地を見たうえで査定してもらうのがよいと感じました。建物の状態や周辺環境など、画面上の情報だけでは判断しにくい部分があるためです。
電話で何度も連絡が来るのは負担だったので、メールのみでの問い合わせを選びました。当時は3社ほどから連絡がありました。できれば3社に訪問査定を依頼し、査定額だけでなく説明の分かりやすさや担当者の対応も比べるのが理想です。実際に査定をお願いしたのは2社でした。
AI査定はゴールではなく、相場を知るための入口です。高い査定額だけで決めず、訪問査定の根拠と担当者の対応を比べることが大切です。問い合わせ方法や連絡社数は、サービスや利用時期によって異なります。
不動産会社と結ぶ媒介契約は3種類
不動産会社へ仲介を依頼するときに結ぶのが「媒介契約」です。正式には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。
| 比較項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 複数社への依頼 | できる | できない | できない |
| 自分で見つけた買主との契約 | できる | できる | できない |
| レインズ登録 | 法律上の義務なし | 7営業日以内 | 5営業日以内 |
| 販売状況の報告 | 法律上の義務なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
| 売主の自由度 | 高い | 中間 | 低い |
一般媒介契約
複数社へ依頼でき、自分で買主を見つけることもできます。人気物件では会社同士の競争が働く可能性があります。
注意点
連絡先が増え、売主自身の管理も必要です。物件によっては各社の販売優先度が上がりにくいことがあります。
専任媒介契約
一社が窓口となり、販売状況の定期報告があります。自分で見つけた買主とは契約できます。
注意点
販売力が一社に左右されます。担当者の提案力や地域での実績を、契約前によく確認します。
専属専任媒介契約
報告が週1回以上あり、販売状況を細かく把握できます。レインズへの登録期限も短く設定されています。
注意点
自分で見つけた相手とも直接契約できません。3種類の中で、売主の自由度は最も低くなります。
契約名だけで決めるのではなく、「自分が販売活動へどの程度関わりたいか」「複数社との連絡を管理できるか」「担当者を信頼できるか」で選びます。専任・専属専任では、とくに担当者との相性と販売計画が重要です。
一番高い査定額を出した会社へすぐに決めるのではなく、査定をお願いした2社の両方と一般媒介契約を結びました。複数社に販売活動をしてもらい、それぞれの動きを見られる方法を選んだ形です。
一般媒介契約では、不動産会社に販売状況を定期報告する法律上の義務はありません。それでも、熱心に動いてくれた1社は、問い合わせ数や内覧の反応などをまとめた月次レポートをこまめに送ってくれました。義務だからではなく、自主的に状況を伝えてくれる姿勢に信頼がおけました。
査定額や会社の知名度だけでなく、販売開始後の連絡頻度、報告内容の具体性、質問への返答の早さを見ると、本当に熱心に動いてくれる担当者か判断しやすくなります。
内覧へ対応できるよう、各社へ鍵を1本ずつ預けました。鍵を渡すときは、口約束だけにせず「鍵預かりの覚書」を交わしておくと安心です。
- 物件と預ける鍵の本数
- 使用目的と預かり期間
- 複製や第三者への貸与をしないこと
- 紛失・破損時の連絡と対応
- 返却する時期と方法
AIでたたき台を作ると整理しやすくなりますが、実際に使う文面は不動産会社にも確認してもらい、双方で署名・保管します。
持ち家の売却にかかる主な費用
売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。住宅ローンの残債と売却費用を差し引き、手取り額を考える必要があります。
仲介手数料
不動産会社の仲介で売買が成立したときに支払います。
印紙税
紙の売買契約書に、契約金額に応じた収入印紙を貼ります。
登記関係費用
抵当権抹消などの登録免許税と、司法書士へ依頼する場合の報酬です。
物件ごとの費用
測量、境界確認、清掃、不用品処分、解体、引っ越しなどです。
仲介手数料の目安
(売買価格が400万円を超える場合に使われる上限額の速算式)
売買価格が3,000万円なら、仲介手数料の上限は105万6,000円(税込)です。売買価格が800万円以下の低廉な空家等には特例があるため、該当する場合は媒介契約前に金額と根拠を確認しましょう。
売却益が出た場合の税金
マイホームの売却では、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。ただし、次に購入する住宅の住宅ローン控除と両方を使えない場合があるなど注意点もあります。
購入時の売買契約書、仲介手数料の領収書、リフォーム関係の書類などは、取得費を確認する資料になる可能性があります。
査定から引き渡しまでの期間
全体ではおおむね3~6か月が一つの目安として紹介されることが多いものの、価格、立地、物件の状態、市況、買主の住宅ローン審査などによって大きく前後します。半年を超えることも想定し、資金と日程に余裕を持って進めることが大切です。
2週間~1か月
1~2週間
1~3か月以上
1~2か月
住み替えを伴う場合は、今の家を先に売る「売り先行」と、新居を先に買う「買い先行」のどちらにするかも重要です。売却期限が厳しいほど価格交渉で不利になる可能性があるため、余裕を持って予定を組みます。
売却した家は、私鉄の駅から徒歩10分圏内でした。立地条件だけを見れば、ある程度の反応があるのではないかと思っていましたが、実際には買い手はおろか、内覧希望者もほとんど現れませんでした。
広告へ掲載してから売買契約を結ぶまでにかかった期間は、約10か月です。駅から近いから早く売れるとは限らず、一般的な期間の目安だけで資金計画や住み替え日程を決めないほうがよいと実感しました。
時間はかかりましたが、最終的には当初の査定価格より約30万円高く売却できました。焦って大きく値下げせず、自分で決めた最低希望価格を意識しながら待った結果には満足しています。
売却を焦っているように見えると、大幅な値下げを期待される可能性があります。事情を隠したり事実と異なる説明をしたりするのではなく、「いつまでに売りたいか」「どこまでなら価格交渉に応じるか」を先に決め、仲介会社と共有して冷静に進めるのがよいと思います。
住宅ローンが残っている家も売却できる
住宅ローンの残債があっても、売却活動や売買契約を進めることはできます。ただし、買主へ所有権を移すまでには、金融機関の抵当権を抹消できる状態にする必要があります。
一般的には、引き渡し日の売却代金で住宅ローンを一括返済し、所有権移転登記と同時に抵当権抹消登記を行います。売却価格よりローン残高のほうが多い場合は、不足分を自己資金などで補えるか、早い段階で金融機関と相談しなければなりません。
すでにローンを完済しているのに抵当権登記が残っている場合は、金融機関から受け取った書類を使って早めに抹消しておくと、売却時の手続きが分かりやすくなります。また、登記上の所有者の住所や氏名が現在と違う場合は、先に変更登記が必要になることがあります。所有者はもともと売主本人で、金融機関は抵当権者です。「銀行名義の家を本人名義へ戻す」という手続きではありません。
固定資産税・都市計画税の精算を確認する
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の所有者にその年度分が課税されます。年の途中で売却しても、市区町村へ納税する義務者が途中で買主へ変わるわけではありません。
そこで不動産売買では、引き渡し日を境に売主と買主で負担額を日割り精算することがあります。今回の取引では、4月1日から翌年3月31日までを1年として計算し、引き渡し後の買主負担分を決済時に受け取りました。売主が先に支払っている分を受け取り忘れないよう、仲介会社へ精算明細を確認しました。
日割り精算は法律で定められた制度ではなく、不動産取引上の慣行です。地域によっては1月1日から12月31日を基準にする場合もあります。起算日、引き渡し日をどちら側へ含めるか、金額の計算方法を売買契約書や精算書で確認しましょう。
引き渡しまでに準備するもの
- 住宅ローン完済と抵当権抹消の手配
- 固定資産税・都市計画税の精算確認
- 引っ越しと不用品の処分
- 境界や付帯設備に関する確認
- 電気・ガス・水道などの精算
- 鍵や関係書類の準備
実際にやってよかった内覧準備
家は住みながらでも売却できます。ただ、経験上、できれば家の中を空にしておいたほうが、購入希望者に隅々まで見てもらいやすいと感じました。
- 残置物はできるだけ撤去する
家具や荷物が多く残っていると部屋が狭く見えやすく、購入後の暮らしも想像しにくくなります。不要なものは、内覧前にできるだけ片付けておきました。 - 生活感を少なくする
住みながら売る場合も、物を減らして水回りや玄関を整えるだけで印象が変わります。買主が「自分ならここでどう暮らすか」を考えられる空間を目指します。 - 使えるエアコンは残す
壊れていないエアコンは置いておくのがよいと考えました。暑い時期の内覧では室内を快適にでき、ゆっくり見てもらいやすくなります。付帯設備として残すかどうかは、契約書と付帯設備表へ明記します。 - 壁紙は全面的に張り替えなくてもよい
壁紙などをすべて新品にしても、その費用を売却価格へ上乗せできるとは限りません。よほどひどい箇所だけ修繕し、それ以外は買主の好みに任せる考え方でよいと思います。
清掃や目立つ傷みへの対応は内覧時の印象を整えますが、大きなリフォームは費用を回収できないこともあります。不動産会社と販売方針を相談してから判断するのがおすすめです。
引き渡し条件で確認した「契約不適合責任」
以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、現在は主に契約不適合責任という言葉が使われます。引き渡した家が契約で合意した種類・品質・数量などに適合していない場合に、売主が負う可能性のある責任です。
個人の中古住宅売買として、売主が契約不適合責任を負わない特約を売買契約へ入れることを重視しました。中古住宅は経年による傷みもあるため、どこまで責任を負うのかを契約前に明確にしておきたかったからです。
個人間売買では、当事者の合意により責任の範囲や期間を調整する特約が検討されます。ただし、売主が知りながら買主へ告げなかった不具合などは、免責特約があっても責任を免れない可能性があります。雨漏り、シロアリ、給排水の不具合、設備の故障など、把握している事実は物件状況報告書や付帯設備表へ正直に記載し、特約の文面は宅地建物取引士などへ確認しましょう。
大切なのは、単に「責任を負わない」と書くことではありません。現在分かっている家の状態を買主へ伝え、双方が納得した条件を契約書へ具体的に残すことです。
まとめ:査定額より「根拠」と「手取り」を確認しよう
- 公的な取引情報で周辺相場を調べる
- 複数社の査定価格を参考に、自分の最低希望価格を考える
- 複数の不動産会社へ査定を依頼する
- 査定額の根拠と販売方針を比較する
- 自分に合う媒介契約を選ぶ
- 住宅ローン残債と売却費用を引いて手取りを試算する
- 引き渡しから逆算して余裕のある日程を組む
査定額は売却を保証する金額ではありません。信頼できる担当者と、納得できる根拠をもとに売り出し価格を決めることが大切です。
売買契約まで約10か月かかりましたが、最終的には査定価格より約30万円高く売却できました。短期間で決まらなくても、最低希望価格と売却期限を決めて冷静に進めれば、納得できる結果につながることがあります。


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